精神科医の“のほほん”ノート

診療に関係のあること、ないこと…ちょっと肩の力を抜いて“のほほん”と書いてます。

2005年

03月03日

(木曜日)

テレビと発達。

テレビやゲームと自閉症の関連について、いろいろと話題になっているよう。
私自身は自閉症テレビ/ゲーム因説には反対ではある。だけど、“テレビばっかり観ていたら発達学的によくないよ”ということが学術的に示されているのかどうか、ふと気になって調べてみたら、2001年発表のこんな論文を発見した。

低〜中賃金の家庭で、2歳児と4歳時を対象に、それぞれ2〜5歳、4〜7歳の3年間に渡ってどんなテレビ番組をどれくらい観たかを日記のように記録してもらい、読解力・計算力・語彙理解力と就学準備度を毎年検査した、という研究。
2-3歳時にこども向けの教育的番組を観たこどもたちは学力評価4項目すべてでよい結果が得られた。2歳開始群も4歳開始群も、一般視聴者向けの番組をよく観ていたこどもは一般視聴者向け番組をあまり観ていないこどもとくらべて学力が劣っていた。
ある時点でのこどもたちの学力によってその後そのこどもが観るテレビ番組を予測することができ、双方向モデルを支持する結果になった。つまり5歳時に優れた学力を示したこどもは小学校低学年時にはこども向け教育番組をよく観てマンガはほとんど観なかったし、3歳時に学力の低かったこどもは4歳・5歳になったとき一般向け番組をよく観るようになっていた。
これらの結果から、幼いときの学力とテレビとの関連は、主として視聴する番組の内容によるという結論に至った。

------------------------

要するに、学力とテレビ視聴に関係があることはわかったけれど、テレビを観ることが即“”だということではない、という結論。よい番組を観るこどもが優れた学力になるのか、優れた学力をもつこどもがよい番組を選んでみるのかという点についても、“双方向モデル”という明快な説明(卵が先かニワトリが先かわからない、ってことですよね、きっと)なのが気持ちいい。

自閉症とテレビやゲームとの関連を直接取り上げた研究ではないけれど、こういう根気のいる研究によって少しずつテレビくんに掛けられた“発達阻害”の疑いが晴れたらいいな、と思う。

コメント

●乳幼児健診

先日、1歳半健診に立ち合わせていただきました。20人ほどの内、「あれれ?」というお子さんが3名…。多いですよね。1歳半の時点で自閉症が増えていると実感できるほどなのだから、テレビ視聴やテレビゲームによる「後天性の自閉症説」はかなりあやしい。

いや、ホントに多いですよね、PDD圏のこどもさんたち。ひととの接触よりもテレビのような無機質で刺激的な存在に惹かれるという部分は生来もっているのかもしれませんが、テレビやゲームそのものが害を及ぼすとは言えないんじゃないのかな、と私は思っています。テレビが無罪だと胸を張って断言できるほどのevidenceはまだないかもしれませんけど…。

どうも、amonn99です。私のブログにコメントいただきましてありがとうございます。

ところで私も1歳の娘がいるのですが、ちょっと前のニューズウィーク(日本版)に早い年齢からテレビを見る子供と見ない子供では集中力に差があると言う記述があり、気になって検索してみましたらこういうものがありました。
http://www.ergoboy.com/news/television_drive_kids_distraction.php

うーん、やはりテレビを見せるのは気をつけないといけないのですね。家は幸い妻も私もテレビは見ないでも気にならないので、テレビつけっぱなし垂れ流しと言うことは無いのですが。

専門知識は全くない素人の母の意見ですが、
TVは利用するものであって、子守をTVに頼っちゃうとダメなのではないでしょうかしら?
TV見ていても、内容について子供とわいわい話しながらだったら
どんな番組でも(あまりに暴力的なのは除いて)良いと思うし
逆に、どんなに良い番組でもひとりぽっちで見ていたら効果は薄いんじゃないか、と経験から思いますがどうなんでしょう?

はじめまして、子供とTVの話題に興味がありまして、書き込みしてます。私は、子供の小さい頃、NHKの教育TVをよく見せてました。15分刻みっていうのが、「ツボ」でした。見過ぎない・・ていうか。

子供が無い頃は、ほとんど見なかったのですが、面白いですよね。
小さい子供は、選択権がないのですから、親が方向づけて見せるべきだと思いました。あと、人形劇が15分で完結のを放送してまして、ビデオに録画繰り返して見せてました。

結果は、小学校低学年までは、「効果」があったようです。その後は、・・・むにゃむにゃ!
失礼しました。

●コメントありがとうございます。

> amonn99さん
またまた面白い資料を教えていただいてありがとうございます! やはりテレビは手っ取り早く犯人にしやすい対象、ということなのでしょうか。アメリカ小児科学会が2歳までのこどもにはテレビを見せるな、とまで提言しているようですし…。いろいろ考えさせられますね。

> MIMIさん
テレビから有益な情報を得たりするのはよいとしても、“テレビが子守”というのはよくないのでしょうね。私も本当にそう思います。テレビを観ることが悪いのではなくて、ただテレビを観ているだけで過ぎていく時間にもっと経験すべきほかのことができなくなってしまうことが問題なのではないかと思ってしまいます。

●スナフキンさん

コメントありがとうございます。
NHK教育の15分番組とは、よい考えですね。内容的にも安心でしょうし、時間も短く区切られますし…。でもたしかに、こどもが大きくなってくるとなかなかそうはいかなくなりそうですね(笑)。

はじめまして。

食事の影響の方が強いように思えますが。

●ええと…

クニさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

ちょっとよくわからなかったのですが、クニさんがおっしゃっているのは「テレビよりも食事のほうが自閉症(の発症?)への影響が強い」ということでしょうか?

ええと、自閉症の原因については今多くのひとが解明しようとしているところですよね。いろいろな可能性が指摘されていますが、単一の原因なのかどうかもまだわからない段階のようです。

私は匿名とはいえ精神科医という立場上、学術的に明らかにされていないことを断定したり明言したりしてはいけないと思っていますので、とてもお返事しづらいところです。ごめんなさい。

テレビと食事のどちらの影響が強いかを明らかにするためには、それ以外の条件を統制した上でテレビを観せる/観せない群、特定の食物を摂らせる/摂らせない群に分けて長期間観察するという研究が必要になると思います。それも出生直後から、できれば一卵性双生児(一卵性の4つ子がいちばんよさそうですけど)で遺伝的要因も共通にして…。

食事といっても食べものは多種多様ですから、どの食物が原因の可能性が高いのかというところからまずつきとめていくとなると相当気の長い話になりそうですね。

いずれはこうした研究も行われて、本当の原因が明らかにされていくのかもしれません。もしも今このような食事に関する研究がすでに行われているのをご存じでしたら、ぜひご紹介いただけたらうれしいです。
原因が明らかになって、よい治療法が開発されたらいいですね!

これからもどうぞよろしくお願い致します。

ぱんぷるむーすさん、ぶっきらぼーな書き込みに、丁寧なコメントをありがとうございます。書き始めると長々となりますので、失礼しました。

私のブログに書かせて頂いておりますが、自閉症の認知は、たぶんグルタミン酸のNMDA受容体の変調でおこるのだろうと。

食事で言えば、マグネシウムとアラキドン酸という物質と、体内でそれに変わる6価の油、リノール酸のとりすぎが、大きく影響し、社会全体でもストレスに対する脆弱性と炎症性の疾患の増加を生んでいるのではとおもっております。胎内での影響が大きいんだろうと。

これらから、マグネシウムを含むミネラル不足、副腎皮質ホルモンの過剰、平常心のホルモンのセロトニンの不足、これらの連関からますますその傾向が強くなる。

3月3日の段階で、医師向けの雑誌に生理学のコーナー持たれている先生が、マグネシウムのことは考えいなかった、今後は注目しますとおっしゃっていただきましたので、そんなに方向違いでもないとおもいます。

で、NMDA受容体は、記憶の想起や再固定にも働いているようですが、蓋のマグネシウムがとれることにより、どっとカルシウムが流れ込み情報を増幅する仕組みですので、マグネシウムが不足し、またマグネシウムの排出を促進するアラキドン酸の過剰は、ここに影響し、意味記憶の障害が起こるだろうと。

自閉症、ばらつきや、倫理等の問題もありデーターでというのは難しい、少なくても自閉症の親という専門家の立場でない私としては無理ですが、実感と合いますし、仮説としては成立するかなとおもいます。

●なるほど…

レスありがとうございます。

テレビよりも食事、という比較のお話ではなかったのですね。納得致しました。

自閉症とセロトニンの関連はずいぶん前から指摘されているところですが、NMDA受容体とMg、アラキドン酸というのはまだあまり注目されていないところかもしれません。

ちょっと検索してみると、これまでに自閉症の治療への可能性としてMgが登場したのは、Vit B6の副作用を軽減するため一緒に投与(1980年代から報告がありますが、この効果については最近は否定的な意見も多そうです)されたときと、自閉症の視床下部のジゴキシン過剰分泌モデル(イソプレノイド経路の異常)で、細胞膜Na-KポンプATP加水分解酵素の抑制とNMDAアゴニストであるキノリン酸に起因する低Mg血症がNMDA刺激性の毒性を高める、なんてところでも関連が示唆されていますね。

私は生化学には疎いので、何度読んでみてもよくわからなくて申し訳ないのですけど、いずれにしてもこれからの研究結果が待たれるところなのではないかな、と思います。

長くなってしまってごめんなさい!

参考URLは
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=12519599
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=14585753

丁寧なコメントありがとうございます。私も、習いたての語学のように、自分の関係するところだけで、他はさっぱりです。

PTSDの治療に使われるEMDR、交互の膝うちでも効果があり、それに近い方法を息子にも使うことが多いのですが、注意の定位を防ぎながらリズムを刻むことで、セロトニンのある状態で、記憶の想起、再固定をすることにより、NMDA受容体の感受性が落ち、遮断される部分が多くなり、記憶が薄まるのだとおもっております。自閉症はこの逆で、NMDA受容体の感受性が亢進した状態なので、記憶の連想想起が難しく、情報を追加して弱い再固定もできないために、弱い記憶の想起、再固定の繰り返しで作る意味記憶に障害がでるのだとおもっております。

こちらこそ長々とすみません。
下記の利根川さんの講演の部分など、もしよければ。
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/news/special/pdf/0402.pdf


コメントの投稿

管理人にだけ読んでもらう

トラックバック

トラックバックURL

■[clip] 幼児期にテレビを見過ぎるといじめっ子になりやすい=米調査

http://www.reuters.co.jp/newsArticle.jhtml;jsessionid=AMFR4ODN54WBWCRBAEKSFFA?type=worldNews&storyID=8084185 >> 4歳時にテレビを見過ぎた幼児は学齢期に達した段階でいじめっ子になりやすいという調査結果が4日、米国で発表された。  一方、親が子ど
2005/04/05(火) 18:46 ★ 思考錯誤

■実証にもとづく子育て

私の書いた4/5のエントリー、こんな広告あるんですねで、takashiさんのさいころじすと日記の[学会・研修会]すくすくコホート三重─21世紀を担う子どもの発達を探るの記述にツッコミを入れてみました(その詳細については当該エントリーを参照のこと)。
2005/04/07(木) 18:30 ★ ロテ職人の臨床心理学的Blog

HOME